Polaris / STRATOVARIUS

ポラリス

ポラリス

 北欧の雄、STRATOVARIUSの12枚目のアルバム。
 ここ数年来のお家騒動があんまり面白かったのでずっとウォッチしてきたのだけど、今作は中心人物であったはずのTimo Tolkki(g)が脱退。後任にMatias Kupiainenなる新鋭を迎えての再出発作品。


 このTimo Tolkkiの脱退劇が、某アメリカ最大のプロレス団体も素で驚きそうな爆笑モノのアングルとギミックに満ちていて、活動が停滞していたこの何年間も僕個人は心から楽しませてもらったのだが、騒動のことを書いているとアルバムに触れないまま終わってしまいそうなので(笑)割愛。


 まずは本人達にとっては笑いごとではなかっただろうトラブルを乗り越えて、これほど「らしい」作品が再び発表されたことを喜ぼう。「らしい」とは言っても新加入のMatiasのペンによる#1"Deep Unknown"からして新味が満載。お約束通りにいかないコード進行と、テクニシャンぶりをしっかりアピールするソロパート「新生」を高らかにアピールしている。良質の疾走曲もしっかり収録され、以前よりも明らかにカラフルさを増したギターサウンドと、それに呼応するかのように多彩に弾きまくるキーボードが、却って"Infinite"の頃の透明感を取り戻したように聞こえるところも◎。バンド内部が健全さを取り戻したであろう事が、はっきりサウンドに現れているように思う。
 ただ失われたものも確かにあって、たとえば"Hunting high and low"のようなメロディアスなミドルチューンというのはこのバンドにはもう期待できないだろう。それでもTimo Kotipeltoの歌唱、Jens Johanssonの流麗なKey、Jorg Michaelの多彩なDrという、僕らが考える「STRATOVARIUSサウンド」は健在であり、実は随分前からバンドサウンドのイメージを作り出していたのはTimo Tolkkiではなかったのだなぁ、ということを認識させられた。
 STRATOVARIUSであってSTRATOVARIUSではないんだけど聞いてみるとやっぱSTRATOVARIUSだった、と書くとややこしくて仕様がないが、ここ何作かの超・迷走ぶりを知っていればこそ、素直に喝采を送れる1枚。


 "King of nothing"、"Blind"、"Higher we go"と、楽曲及び歌詞が結構オトナゲないけれども(笑)。しっかりデトックスして次作を作ってください(笑)。