Polaris / STRATOVARIUS
- アーティスト: ストラトヴァリウス
- 出版社/メーカー: ビクターエンタテインメント
- 発売日: 2009/05/20
- メディア: CD
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ここ数年来のお家騒動があんまり面白かったのでずっとウォッチしてきたのだけど、今作は中心人物であったはずのTimo Tolkki(g)が脱退。後任にMatias Kupiainenなる新鋭を迎えての再出発作品。
このTimo Tolkkiの脱退劇が、某アメリカ最大のプロレス団体も素で驚きそうな爆笑モノのアングルとギミックに満ちていて、活動が停滞していたこの何年間も僕個人は心から楽しませてもらったのだが、騒動のことを書いているとアルバムに触れないまま終わってしまいそうなので(笑)割愛。
まずは本人達にとっては笑いごとではなかっただろうトラブルを乗り越えて、これほど「らしい」作品が再び発表されたことを喜ぼう。「らしい」とは言っても新加入のMatiasのペンによる#1"Deep Unknown"からして新味が満載。お約束通りにいかないコード進行と、テクニシャンぶりをしっかりアピールするソロパート「新生」を高らかにアピールしている。良質の疾走曲もしっかり収録され、以前よりも明らかにカラフルさを増したギターサウンドと、それに呼応するかのように多彩に弾きまくるキーボードが、却って"Infinite"の頃の透明感を取り戻したように聞こえるところも◎。バンド内部が健全さを取り戻したであろう事が、はっきりサウンドに現れているように思う。
ただ失われたものも確かにあって、たとえば"Hunting high and low"のようなメロディアスなミドルチューンというのはこのバンドにはもう期待できないだろう。それでもTimo Kotipeltoの歌唱、Jens Johanssonの流麗なKey、Jorg Michaelの多彩なDrという、僕らが考える「STRATOVARIUSサウンド」は健在であり、実は随分前からバンドサウンドのイメージを作り出していたのはTimo Tolkkiではなかったのだなぁ、ということを認識させられた。
STRATOVARIUSであってSTRATOVARIUSではないんだけど聞いてみるとやっぱSTRATOVARIUSだった、と書くとややこしくて仕様がないが、ここ何作かの超・迷走ぶりを知っていればこそ、素直に喝采を送れる1枚。
"King of nothing"、"Blind"、"Higher we go"と、楽曲及び歌詞が結構オトナゲないけれども(笑)。しっかりデトックスして次作を作ってください(笑)。
Streets of Fire / PLACE VENDOME
- アーティスト: プラス・ヴァンドーム
- 出版社/メーカー: キングレコード
- 発売日: 2009/04/22
- メディア: CD
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Pink Cream 69勢がバッキングにも参加している為、「Kiske sings PC69」的なものを想像しつつ聞いてみたが、予想は当たりでありハズレ。 Dennis WardもMichael Kiskeもソングライティングには関っておらず、AOR然としたキャッチーなハードロックをMichael Kiskeがひたすら伸びやかに歌い上げる極上品だった。
ピアノを効果的に使用したドラマティックかつメロディアスな楽曲は確かに「メタル成分の抜けたPC69風」とか「ドラマティックに叙情性を増したJOURNEYっぽい」とか表現できそうだが……えーとKiskeの歌声が気持ちよすぎて文章が思いつきません(笑)。ソロではイマイチなKiskeだが、この作品での適度にリラックスした歌唱は本当に絶品。冒頭の#1"Streets of fire"から、もうすんごい気持ちよさそうに伸びる伸びる。ソロで微妙な、というか地味な作品ばかり作っていて忘れかけていたけど、この人やっぱり凄いわ。ぶっちゃけHELLOWEEN時代よりも好みです、コレ。
Dreamcatcher / LAST AUTUMN'S DREAM
- アーティスト: ラスト・オータムズ・ドリーム
- 出版社/メーカー: マーキー・インコーポレイティド
- 発売日: 2008/12/24
- メディア: CD
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彼らに関しては音楽性は不変と思われるため、楽曲の出来不出来だけが評価を分ける要素となるのだが、このアルバムも不変の極上の哀愁メロディアスハード。そろそろ使い回しも目につくようになってはきたが、Mikael Erlandsson(Vo.key)の甘いハスキーボイスにAndy Malecek(g)のギターが映える映える。前作で若干薄まっていた哀愁味を今作ではしっかり取り戻しており、リフが思いっきりTALISMANな#3"Hold on to my heart"のキャッチーすぎるサビと泣きまくりのギターでいきなり悶絶。この声にこのギターはもう反則技でしょう。
Marcel Jacob(b,rhythm-g)とJamie Borgerの元TALISMAN組リズムセクションもしっかりとハードロックな力強さで屋台骨を支えており(結構ベースがうねうねやっていてカッコいい)、これまた毎度のことながら「ドライブにおすすめの1枚」と言った感じ。
良くも悪くも「実力派スタジオミュージシャンの集まり」というイメージからは未だ脱却できておらず、「バンド」としての存在感には相変わらずの薄さを感じるものの、これからもこのレベルのアルバムを年1枚作ってくれるなら僕は全く文句ありません。
FLAME / DGM
- アーティスト: DGM
- 出版社/メーカー: Scarlet Italy
- 発売日: 2013/03/26
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イタリア産の、ほぼ無名ながら今となってはベテランプログレメタラー、DGMの多分7thくらい。
「DGM」というバンド名は創設メンバーの頭文字から取った、というこのバンド。アルバム毎にメンバーチェンジを繰り返し既に創設メンバーが誰もいないという状況なのだが(これでもDGM名乗るのってどうなの?)、アルバム毎に着実にステップアップしているのも事実。前作発表前にバンドの中核だったGとKeyが脱退、今回もVoが交代しての新作アルバムとなる。
一時期の、というかおそらくDGMファンの多くがハマったあの「Misplaced」の、「ちょっとプログレっぽくてテクいメロスピ」なちょっとイモ臭いDGMはここにはなく、今作はどこか都会的に洗練された質感でもって緻密な楽曲を演出する、「明快になったSYMPHONY X」的な「メロスピっぽい要素もあるプログレメタル」へと進化。スリリングかつテクニカルに疾走する#1"Hereafter"でツカミはOK、プログレにしてはキャッチーなメロディ満載とも言え……つーか、この出来で何故無名? イタリア産メタルでもっとも過小評価されているバンドではなかろうか。このアルバム、普通のメタルファンにもビビッと来るものがあるように思うのだけど。
#8"Heartache"に参加の前任G、Diego Realiの扇情力あふれる弾きまくりっぷりにはどうしても「何故辞めたッ!?」となってしまうし、アルバム「Misplaced」の時代とは完全に別バンドだとは思うものの、これはこれで新たな魅力にあふれている佳作。
新VoはMichael Eden(EDEN'S CURSE)似でハイトーンもよく伸びるタイプ。イタリアのバンドと聞くとそこだけが心配になる(笑)のだが、歌える人さえ居れば楽器隊は上手い人多いのかね。
No Line On The Horizon / U2
- アーティスト: U2
- 出版社/メーカー: UNIVERSAL INTERNATIONAL(P)(M)
- 発売日: 2009/02/25
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「ロックでメッセージを伝えるのはダサいなんて言ってる奴は、ロックをわかってないと思うな」
忌野清志郎
だとするなら、U2は「ロックをわかっているバンド」と言えるかも知れない。
昨今の平和活動を色濃く反映した、メッセージ性の非常に強いアルバム。
サウンドからジャケットデザインまでモノトーンで統一された世界観の中、若干柔らかみを増したと思える楽曲群でまとめあげた今作は、確かに聞きごたえがある。水平線をシンプルに撮影した写真に「=(イコール)」のシール。デザインも素晴らしい。
ともすれば大仕掛けに走りがちなスケール感をシンプルな構成に封じ込めたセンスも見事だと思う。
だが所々に見え隠れする(と感じてしまう)、安物の新興宗教めいた響きがどうにも気になって仕方がない。
メッセージを伝えることは素晴らしい。彼らが著名な慈善活動家であることも知っている。
だからこそ、だ。
U2が、ロックバンドが積極的に慈善活動を行なっているのか。
慈善活動家がロックバンドとしてアルバムを出したのか。
今作でそれが分からなくなってしまったように感じる。
そんなことはどうでもいい、もっと緊急かつ巨大な問題が世界には山積みなのだ、と言われれば、それはそうなのだけれど。
「音楽」としてこのアルバムに接する時、僕はほんの微妙な違和感を覚えてしまうのだ。
Are You Ready To Rock / ECLIPSE
- アーティスト: エクリプス
- 出版社/メーカー: キングレコード
- 発売日: 2008/11/26
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思わず頭を抱えてしまう、韓国では絶対発売できなさそうなジャケットのセンスとは裏腹に、詰まっている音楽は超高品質のスカンジナヴィア・ハードロック。良いという噂を知りつつ今までスルーしていたが、これほどとは。
なんとも言えずナイスな北欧ボイス(笑)のVoと、これまた北欧の空気をテクニカルなフレーズに封じ込めるG、Drの音作りからKeyサウンドに至るまでが、きらびやかだった80'sハードロックの徹底した精神的コスプレ(笑)となっており、ある意味オッサンホイホイと化した本作に僕もまんまと釣られてしまったわけですハイ。
とはいえ快活に疾走する楽曲の良さはマジモンで、全編通して40分というコンパクトさも手伝ってスカッと気持ちよく聴ける。