No Line On The Horizon / U2

ノー・ライン・オン・ザ・ホライゾン

ノー・ライン・オン・ザ・ホライゾン

「ロックでメッセージを伝えるのはダサいなんて言ってる奴は、ロックをわかってないと思うな」

忌野清志郎

 だとするなら、U2は「ロックをわかっているバンド」と言えるかも知れない。
 昨今の平和活動を色濃く反映した、メッセージ性の非常に強いアルバム。
 サウンドからジャケットデザインまでモノトーンで統一された世界観の中、若干柔らかみを増したと思える楽曲群でまとめあげた今作は、確かに聞きごたえがある。水平線をシンプルに撮影した写真に「=(イコール)」のシール。デザインも素晴らしい。
 ともすれば大仕掛けに走りがちなスケール感をシンプルな構成に封じ込めたセンスも見事だと思う。


 だが所々に見え隠れする(と感じてしまう)、安物の新興宗教めいた響きがどうにも気になって仕方がない。
 メッセージを伝えることは素晴らしい。彼らが著名な慈善活動家であることも知っている。
 だからこそ、だ。
 U2が、ロックバンドが積極的に慈善活動を行なっているのか。
 慈善活動家がロックバンドとしてアルバムを出したのか。
 今作でそれが分からなくなってしまったように感じる。


 そんなことはどうでもいい、もっと緊急かつ巨大な問題が世界には山積みなのだ、と言われれば、それはそうなのだけれど。
 「音楽」としてこのアルバムに接する時、僕はほんの微妙な違和感を覚えてしまうのだ。